開業
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水先人は、医師や弁護士等と同様に一人一人が個人事業者ですので、水先養成課程を修了し、国家試験に合格すると、申請により国土交通大臣から水先人の免許(事業免許の意味を持つ)が交付されます。
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就業する水先区の水先人会に入会し、水先人として開業することになります。
開業時期は、一級が養成開始の翌年の2月頃、二級が5月頃、三級は養成開始の2年後の9月頃、商船乗船訓練を受ける者は4年後の9月頃となります。
開業準備
水先人会への入会手続き、個人事務所の開設、水先約款の届出、水先料の上限認可申請及び届出等を開業までの間に行います。
個人事務所の開設など開業準備にはある程度の資金が必要となりますが、前述した一般財団法人海技振興センターでは、開業のための資金の貸付も行っています。(本制度については、直接、海技振興センターにお問い合わせください。)
水先人会
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各水先区には必ず一つの"水先人会"が設置されており、それぞれの水先区で業務を行う水先人は必ずその水先区の"水先人会"に入会しなければなりません。
詳細はこちら表-3 各水先人会別の水先人数
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水先人会は、船社または船舶代理店等から水先要請の連絡を受け、それを水先人に取り次ぐ業務を行います。
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水先人会は、各種の研修や操船シミュレータを使用しての操船訓練等を実施して、所属水先人の技術力の維持・向上も図っています。
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水先人会は、定期的に健康診断を行い、所属水先人の健康管理にも注意を払っています。
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各水先人会は、水先人会の役員、組織、会議、管理・監督、資産・会計、各種委員会及び会員の品位保持その他に関する会則を定めており、会の運営はこの会則に基づいて実施されています。
水先人は入会後これらの会則を遵守しなければなりません。
個人事務所
水先人の業務は24時間体制ですので、全員の交代制でローテーションを組み業務を処理しているため、公共交通機関が動いていない時間帯に業務が開始又は終了することが珍しくありません。
したがって、自宅が遠いところにある者は、自宅から水先人会の事務所への出勤がいかなる時間でも可能な場所に事務所を設置する必要があります。これを"個人事務所"と呼んでいます。
新人研修
水先人養成課程における"水先実務修習"は、現職の一級水先人の水先業務見学が主であり、自ら操船を行うことはなく、水先人会に入会して初めて実船での操船をすることになるので、実務経験の不足を補い、安全を確保するため、新人研修として一定の期間、一級水先人である"指導員"とともに乗船し、その監督の下で段階的に操船の実施幅を広げ、最終的には指導員の合格の評価を得た上で独立して業務を実施する体制をとっています。
就業
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水先人は水先人会に就職するのではなく、あくまでも個人事業者です。
船社や代理店から水先人会に集まった水先業務の要請内容が整理されて、各水先人に業務連絡として取り次がれ、各水先人のその日の業務が確定します。 -
各水先人会では、疲労予防のため、また、水先人が均等にどんな業務にでも当たるように予め就業のローテーションを組み、その順番に従って輪番で業務を処理する体制を採っています。
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水先業務は、船長からの要請で行うものであるため、業務の繁/閑、業務時間等が不規則で、船の遅れにより業務予定時間が頻繁に変わることもありますし、当直日に乗船する予定船舶がなくても待機、長時間の拘束を受けることもあります。
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日本の港には、大小様々、多くの船種が寄港しますし、港内の状況も千差万別、水先業務時間も異なります。
また、各人の水先経験年数によって習熟度にも差があります。
したがって、各水先人会では水先人の経験度に応じた業務制限を設け、経験年数に応じて順次業務の実施可能範囲を広げていく方法により、船舶運航の安全を図るとともにユーザーである船社・船長に安心してもらえるようにしています。
休日等
会社員とは異なり、水先業務は365日、24時間体制で実施されていますので、日祭日が休日になるとは限らず、業務に就く日と休日のローテーションが予め定められています。
休日の日数は水先人会によって多少異なりますが年間を平均すると、月に10日程度です。
また、定期的に1週間程度の長期休暇があるのも水先人の魅力の一つです。