水先人の免許
水先人になるには、国家試験である水先人試験をパスし、水先人の免許を取得することが必要です。
水先人の免許は、各水先区ごとに交付され、免許を受けた水先区のみでしか水先業務を行うことができません。
水先人の免許は、一級から三級までの等級別の免許になっています。
免許の行使範囲
等級別の免許の行使範囲は次のとおりです。
二級及び三級水先人は、それぞれの級で一定の経験を経た後、進級のための教育・訓練を受け、上級の水先人の免許を取得することができます。
図-2 水先人の免許の等級と行使範囲
水先人養成課程
水先人を養成する制度は水先法で定められています。
その養成を行う学校を「登録水先人養成施設」といい、日本では唯一兵庫県芦屋市にある「海技大学校」がそれに当たります。同大学校には「水先教育センター」が設置され、現役水先人等が講師として教育訓練に当たっています。
水先人の免許を取得するためには、後述する水先人試験に合格するほか、登録水先人養成施設における水先人養成課程の修了及び次表に示す要件を満たす必要があります。
表-1 免許を取得するための要件
-
養成期間
海技大学校における等級別の養成期間は、次のように定められています。
表-2 養成期間とその内容
(注1)三級水先人(航海士経験者)とは、船長又は航海士として総トン数千トン以上の船舶(沿海以遠)に1年以上乗り組んだ経験を有する者
(注2)商船乗船実習は、外航商船(総トン数千トン以上の船舶(沿海以遠))等に船員(航海士)として乗船して商船の運航実務を習得することを目的に2年間外航船社に出向し、航海士として勤務する形態で履修
(注3)座学は、航海、運用、法規及び英語に関する科目等を履修
(注4)操船シミュレータは、操船シミュレータ装置を用いて実践的に履修
(注5)水先関連事業実習は、タグボートでの訓練、船舶代理店での実習のほか海上交通センターや荷役ターミナル等の見学
(注6)水先実務修習は、免許の取得を目指す水先区に赴き、既に水先業務に従事している一級水先人と一緒に実際に船舶に乗り込んで行う実践的な実習
なお、上表の合計期間は、最短の期間であり、1~2ヵ月延びる場合があります。
-
入学時期
海技大学校における水先人養成課程は、次の時期に開始されます。
- 一級水先人養成課程 4月
- 二級水先人養成課程 1月
- 三級水先人養成課程 10月
養成課程を履修する者は、「水先修業生」と呼ばれます。
-
水先区共通教育と水先区個別教育
水先人養成課程での教育訓練は、全ての水先区に共通な内容(水先区共通教育)と水先区個別の内容(水先区個別教育)に仕分けして行われます。
水先区共通教育は、海技大学校において、水先区個別教育は、免許取得を目指す水先区において行われます。
水先区共通教育を修了し、国家試験の一部に合格しなければ、水先区個別教育に進むことができない制度になっています。(国家試験の項をご参照ください。)
-
水先人養成課程の修了試験
海技大学校での水先区共通教育及び水先区での水先区個別教育が終わると、海技大学校において養成課程の修了試験が実施されます。
国家試験
国家試験である水先人試験は、身体検査と学術試験に分かれています。
身体検査は、学術試験の前に行われ、視力(矯正視力も可)、弁識力、聴力、疾病及び身体機能が検査されます。
学術試験は、筆記試験及び口述試験(口頭試問及び海図描画)により実施されます。
筆記試験は、水先区共通教育の実施期間中に、口述試験は、水先区個別教育の実施期間中に行われます。
水先人の免許取得までの流れ
図-3 水先人養成課程の開始から免許取得までの流れ
経済的支援体制
水先人養成のための教育は比較的長期間に及ぶため、養成課程を履修する者(水先修業生)に対する経済的支援体制が整っています。
その支援事業を行うのが、一般財団法人「海技振興センター」です。
同センターは、水先修業生に対する月々の養成手当、教科書等の教材、海技大学校の外部で実習等を行う場合の旅費等を支給するほか、在学中の水先修業生に対する傷害保険契約を結びます。
同センターの経済的支援を受けるには、同センターが実施する水先人養成支援対象者選考試験に合格しなければなりません。